 |
||||
 |
||||
 |
|
|
|
|
わりとー、体育会系ノリなんだよね。 あたしの居るハニュエールの組合って。遊び好きばっかでしょっちゅう野球大会とかバーベキューとかやってる。もちろんハニュでもおしとやかな子っているけど、ウチの組合がトクベツなのかもね。 んでさ、家に帰ったらまた暗かった。 ふたりの同居人のうちのひとり、世帯主やってるフォニュエールのヨグ姉が今、ダメダメの最中なんだ。え、ちゃうちゃう、生理じゃないて。 居間で背中まるめてっとこを後から見てると婆さまみたいだよ、まるで。黒い服ばっか着てるからよけい、ね。 ソファーによっかかってビーズに糸をとおしているヨグ姉。近眼の眼をメガネの奥でしばたかせながら黙々と手を動かしてる。窓ぎわの指定席で同じくビーズをいじっている同居人その３のモズはちらちらとヨグ姉を見ている。 …こうみえても心配してんだ、あたしたちは。 「ウルト・エルノア事件」の直後、ヨグ姉は冗舌だった。妙にはしゃいでべらべらしゃべくって何がおこったのか逐一説明しつづけた。そのあと、疲れたといって30時間眠り続け目が覚めたときにはもう、できそこないのぬいぐるみみたいに変わりはてていたんだ。
「モーズー。ちょい、さ、やってくんない？だーめーだー。」 モズが腹ばいのまま匍匐前進してあたしの手からこんがらくったテグスを受け取った。 「あージル姉、やっぱまたキューブでつまづいたんだ？ モズ、彼はレンジャーとしてラグオルに降りてるときは実に精悍に見えるけど、顔のカモフラージュをおとして私服になるとホンット、まったりしたカンジ、そんでやさしい子だ。 「ね、ココさ指でこう押さえてから通すとねテグス、いいんだ。」 「ん、さんきゅさんきゅ。やってみるわ。 「指定席」のクッションの上にに大事そうにのっかっている、ありゃブレスレットかな。翡翠色で細かいあみこみがしてある。 「アンタには少しちっさいんじゃない、それ。ふぅんよく見っとオリエンタルちゅー？かイイカンジ。 モズは最近コイビトが出来たんだ。いつの間にかくっついてんだからびっくしした。内気な子なのにさ。 「…うん。どうかなこれ？ 「ああ、あたしは気に入ったけどね。 「うわ、イジワルだなジル姉。 「うんうん、わかってるって。 「あ、うん。でも…」 モズはヨグ姉のほうをちらりと見た。 「いっといで。行きたいとこがあるならいっといで。 あたしは。 けんけんと乾いた咳をすると、ヨグ姉は安心させるようにモズに向かって微笑んだ。 微笑み？ う、まずい。あたしの頬はぴくぴくと痙攣した。だってその顔は、あまりにひどかったんだ。凄惨…ちゅーのか。無理に笑おうとしたヨグ姉は表情を暴発させてしまったのだ。
部屋はあたしとヌイグルミなヨグ姉だけになった。 「暗くなったねー、ずいぶん。」 移民の船、パイオニアの「なんちゃって環境」のおかげであたしたちは母星とおんなしような時間感覚で暮らせるようになってるんだよね。 夜が来る。 …。 |
||
|
|
|
|
|
|