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「今、乾燥だからもう少し待っていてくれたまえ。
んん、おや。」

先にあがらせたヨグはバスタオルを巻き付けたまま仮眠用ベッドで気持ち良さそうに寝息を立てていた。

「やれやれ…。………。」

血行が良くなった肌に「痣」のむらさきはいっそう鮮やかにみえた。

「それにしても納得がいかないな。」

ふろしきづつみでも開くようにヨグのバスタオルをはだけるとジャンは「痣」の観察を再開した。何度か目を閉じ、空を仰ぎ、首をひねる。
最後にとんとんと人差し指で鼻の頭を叩くとバスローブを脱ぎ捨てベッドに膝をついた。

シモンズがまだそこに居たとしたら彼は卒倒していただろう。もっとも彼は二人がのんきに風呂につかってる間に遁走したのだが。
きわめて真面目な表情でジャンはヨグの「痣」に自分の体を重ねていった。腕、胸、腰。だが、その後が続かない。

ふんふん、違うのか。この体勢でラゾンデを放ったなら、ももの前部にも痣がつくはずじゃないか。だいたいなんだってこんな体勢でラゾンデを放つ必要がある？

そのときジャンの下に居たものが大きく息を吸い込んだ。

「う、うう。重…。…ク？
キ…リーク？」

「あ、ヨグ？ち、ちがう。」

否定する間もなくヨグの両足がきりりとジャンに巻き付いた。

「は、そうかそうだったのかなるほど。
やっぱり、ちくしょう。この体勢だったのかい。
いや、しまった!」

ほぞをかむのも遅かった。ヨグはラゾンデを詠唱…
いや、詠唱中にくんくんと鼻をうごかしテクニックを不発させ。そしてぼそっと名を呼んだのだ。

「ジャン？」

半身を起こして見るヨグは目が閉じたままで、なかばねぼけているようだ。

まったく、さぁ。そうだよ、そんな感じだった。
奴はさ、ショートしてたんだ。だからこんな、不細工な戦いになって、さ。ふ…ん。」

「なんで、詠唱を止めたんだいヨグ。
どうしてボクだってわかった？」

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