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シモンズははしごにはり付いてべそをかいていた。

もうこうなったら、グランツに撃たれた方がマシだ。怖い、これ以上ここに居たくない。
名乗り出ようとはしごを降りだした、その時。

ぱん、ぱん！手を打つ乾いた音が二回響いた。

「おや、待てよジャン。
前にもぼくはこんな感情を持ったぞ。」

はたと何かに気付いたようにジャンは手を打つと自省の構えにはいった。

「まえに大声を出した時、か。ふうむ。ああ、カフェでヨグと話した時だな。会話の内容は…。うんうん。
まてよ、もうひとつ覚えがあるぞ。
レイマーの彼、そう、モズくんと話した時だ。まさかその時も…ははぁ。
いや、まいったな。」

ヨグはそろそろ、目がまわってきた。
ジャンがにこにこしながらこちらに向き直ったのだ。

「いやぁ、ヨグ。悪かったね。
気がついたよ、ぼくの傾向にさ。冷静な分析のなせるわざだね。

つまり、さ。これは「やきもち」なのさ。」

「やき、もち？」

「どうもぼくはがまんできないみたいだよ、目の前の話相手がぼく以外の人間に興味をしめすのは。

うふふ、覚えてるかい。カフェでぼくに頭から水をかけられたろ、あのときは君が熱心にキリークのことを話していたね。
モズくんのときは彼があまりに熱っぽく思い人のことを語ったもんだからつい、ね。

そりゃ、ぼくだってすべての人間と関係を結びたいわけじゃないさ。単純にわがままなんだろうね。
望めば理論だってぼくの方を向いてくれるんだからさ。

わるかったね、「おかしい」なんて云って。

ホントに。」

そういってポンとヨグの肩に手をかけたジャンは、小さな悲鳴をあげた。

「うわわ、冷えきってるじゃないか。
なんだい、いってくれよ。空調いじったのにさ。
まぁ、いい。」

「ちょ、ちょっと。なんだ？」

有無をいわせぬ強引さでヨグを抱き抱えるとジャンは小走りに引き返した。居間をぬけ廊下をわたり…。

「チョコとバナナ、どっちが好きだい？」

素裸で抱き抱えられたヨグにできるのは質問に答えることだけだった。

「チョコ！、もちろんチョコ。」

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