ヨグは最近、アロマ物にこっていた。
最初は気に入った香りをコットンにしみ込ませガラスのうつわに入れたりして、ひとりさめざめと楽しんでいたのだが。そのうちニューマンらしい好奇心がむくむくと頭をもたげてきて、オイルの調合が始まった。
…。
ヨグは楽しかったが同居人たちに甚だしい不興をかってしまった。あの温厚なレイマーのモズが不満を申し立てたのだ。ヨグは悲しかったが趣味を断念せざるをえなかった。
「ふぁえ？んんん…ふぁんら？」
「ジャン…しゃべるなら耳をくわえたままじゃなく〜」
シティのどまんなかでいつもの挨拶がはじまった。ヨグの耳を後ろからくわえた「天才」ジャンカルロ・モンタギュー博士はすこし名残惜しげに口を離した。
「うふふ、やあヨグ。
ちょっとその調合は工夫が必要じゃないのかな？」
「おや？」
「やっぱりね、そう。」
やや、いきなり看破された。ヨグはあらためてジャンに驚いた。
「ん〜。よし、あるある。何冊かある。
さ、行くよヨグ。君には少々基礎知識が必要なようだね。」
「え？行く？今？どこへ？」
「さ、乗って。こっち。」
天才は、あいかわらず唐突だった。
後部座席でたくさんのエネミーパーツといっしょくたになりながら、ヨグは観念した。ジャンが調子良く唄う「幽霊」で、車はすべるように飛ぶ。
♪ぼくん家の窓は〜ナナメにかたむく〜
…さっきもやっぱり感じたナ。ジャンがいつもさせてるにおい。あれってなんなんだろか。
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