トップ　おはなし　ブログ

冗談じゃなくこのシップは実際、重いのだ。

まだ半分もチェックされていない書籍リストをポケットにねじこむと助手のシモンズは注意深く長いハシゴを降りはじめた。ためいきふたつでようやく床に降りる。ここはまさに書庫の林立する森…いや、森にたとえるなら樹海だ。

そのオーナーはモンタギュー博士。パイオニア２にケタはずれの冊数の本をもちこんだ事にも驚くが、がくぜんとさせられるのはこれらすべてに博士の書き込みが見られる事だ。ひとこと「つまらん」と書きなぐっているのもあった、印刷された字よりも多い書き込みがあるものもあった。

「紙にね、書かれたものが嫌いじゃないのさ。」

「嫌いじゃないのに博士、本が書き込みで真っ黒ですよ？」

「うふふ、大事にしたってあの世にもっていけるわけじゃないもん。」

「…あの世？あの…失礼ですが博士にしてはなんというか、絶対言いそうにない言葉かと…」

「君に合わせたんだよ、シモンズ。
わかりやすい比喩だったろ？」

…そういえば、そんなやりとりもあったっけ。天才の片鱗といえば簡単なんだけど。

そういえばさっきモンタギュー博士が入室したようだったけど、挨拶は後でいいかな。お客さんと一緒のようだったし第一このリストは博士に頼まれたものだから早く揃えちゃわないとまた怒鳴られるしな。
列を変えてまたハシゴに登り始めたシモンズはそこで、モンタギュー博士のとんでもないセリフを耳にした。

「脱いで」

は？
シモンズはハシゴの真ん中でかたまった。

▶次へ

　トップ　おはなし　ブログ