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そこには見事にピアスに加工されて…モズが森で拾ってきた蝶の羽がおさまっていた。黒いべっちんの中で羽はさっきと変わらず青くきらめいている。

「あ、あの…これ…」

「ん？どうだい。
これなら多少手荒にあつかっても破けることはないんだよ。フォトンでコートしたからね。
君がつけてもいい、恋人にプレゼントするのも素敵じゃないか。」

「あ、あなたにあげますよ。ぼく…」

「おや、せっかくだけどね？ぼくの思い人は耳がね…おっと、まあいい。
ねぇ、気にくわなかったかい。
いや、ほんとに君さ、好きな人いないのかい？」

「好き…な人。ああ、えっと…。」

モズはためらいなくピアスをつまみあげ、フォースの耳元にかざした。迷彩ペイントされた顔のなかでモズは満足げに目を細めた。

「おやおや、ぼくかい？違うよね。」

「あなたと同じ、フォニュームの…えっと、ぼくアパートが狭いんで彼のクロークを貸してもらってるんです。彼、自分は使わないからって。
肌が真っ白くて、長い髪をたばねていて…眼鏡をかけた物静かな人…です。
あなたは笑うかもしれないし、ぼくにもどうしてか分からないんだけど。ぼくはあのひとと仲良くなりたいなって。

ヘンですよね、こういうのって。

う、うわ。ぼく、なんでしゃべっちゃたんだろう。
ああ、ご、ごめんなさい。」

かつん、かつ…ん。

フォースは腕を組んで不愉快そうに厚底のかかとを鳴らすとモズにつめよった。
大柄なモズが圧倒される。

「君がね！、いいかい？
あやまるべきは！
しゃべったことじゃない。
君が自分の気持ちをじぶんでヘンだ、って決め付けたことさ。」

さっきまでつかみどころなくへらへらしていたフォースが本気で腹を立てている。反射的にあとずさったモズの肩に腕を回すと、意外なほどの力で引き寄せられ手すりのほうを向かせられた。はたからみると二人はちょうど、並んで手すりにひじをかけ外の景色をながめながらおしゃべりしてるようにしか見えない。実際モズはフォースに肩を組まれて身動きできないのだが。

「あ、ぼくいったい…」

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