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違うんだってバ。

「背中を守る。」ってのはね。

ラグオルの地下で依頼任務を終えたヨグは、今日は転送機械まで歩くことにした。 ホントに疲れていたけど、気分を変えたかったのだ。
それというのも途中で合流した同業者のアッシュ、彼がむやみと先を急ぐのでヨグはいつもの倍、気を使うハメになったのだ。「あんたの背中を守れるくらいに強くなりたい。」と、久々に会ったアッシュは云ってくれたのだが・・・。

無意識にほっぺたの絆創膏をなでながらヨグは考えた。

「背中を守る」ってのは。

雨のそぼふる森で凶暴化した原生動物にかこまれる。
無言でふたりは背中あわせになり、敵を倒していく。背中ごしに相手の体温を感じながら。　

ヨグは初めてキリークに会った日のことを思い出していた。機械の彼にも体温はあったのだ。正確には処理熱かも知れないが。

ずいぶん歩いた。そういえばアッシュはどのルートで「パイオニア２」に戻ったのだろう。
陰気なしけった風にほっぺたの傷がうずいた。

地下の坑道にある広場に人影がある、ふたつ。ひとつは床に伏し、ひとつは立ちつくしこちらを見ている。

「く、来るな、ヨグ・・・。」

「ちょっと、アッシュ？あんた…」

伏したアッシュは、したたか顔が腫れあがっている。

「ックック」

「キリーク！」

「う…気をつけろ！何かにとりつかれているとしか…」

「見ツケた・・みつ・・・」

鎌の背で打たれてアッシュは気を失い、「ッつ！」

キリークの返す一閃はよけきれなかったヨグの腕を裂いた。

「クハハハッ…」

今日のキリークは違う。あたしにとどめをさす気だ。

ヨグの手のひらに汗がにじむ。
次の一撃が来る前になんとかヤツをひるませなければ。

「はぁっ！」

ヨグの上級電撃ラゾンデがキリークを直撃した。広場のすみずみまで青白いスパークが走り、ヨグのハンターズスーツについたフェイクファーが逆立つ。

どぅっ・・・

「え？」

キリークがあおむけに倒れたのだ。

金属の四肢に青白いスパークがまとわりついている。ヨグは銃をかまえキリークに歩み寄った。復帰する気配はない。

「・・・」

照準を頭部にあわせたまま、ヨグはキリークに馬乗りになった。妙な角度に首をかしげながらキリークの明滅する目をしばらく覗き込むと、銃をぽろりと離し床をまさぐった。
ヨグはキリークから目を離さずに手だけで何かを探している。それはアッシュの武器だった。
刃が双方向についたダブルセイバー。

こつん…。

爪があたった。たぐりよせる。グリップを握る…。

「ふわぁ、…うっ」

血が逆流するような衝撃、だめだ。

この武器はフォトンの特性でフォニュエールのヨグにはなぜか触ることすらかなわないのだ。ヨグは何度も掴もうとするが、腕がしびれ手のひらに拒否反応で血がにじみだしてきた。

だめなンだ。テクニックやこんな銃なんかじゃ。もっと、もっと…

「うっ、くぅぅ…」

「ナぜ・・・とどめ・・。さサない。
つかえヌ柄物・・なぜ無理・・ニ。」

キリークがヨグの目をのぞきこむ。

「クク、そウか・・・いイぞ。 ナんと黒い魂だ。
おれノ血をみたイ・・のか？欲望のタめに明日をもかエりみぬ…」

明滅していたキリークの目があやしい輝きを帯び、ヨグがまたがっていた体から焦げ臭い煙があがりはじめた。

「ちぃっ」

いかれたケーブルを断ち切ってんだ。動かしたい機関に動力を集中させるため？

ばしぃぃ・・・！

凄まじいスパークとともに自由をとりもどした腕がヨグの首をとらえた。熱い。片手ですでにヨグは自由を奪われた。もう片方の腕も復帰しかけている。大鎌をにぎりしめた手が。

ふいに天地が逆転した。
今度はヨグがおさえつけられたのだ。背中を強打してヨグははげしくむせた。首にキリークの指がくいこむ。かすむ視界に鎌が見える。
ヨグの血がにじんだ手は武器を諦め、額によせられた。いつもの詠唱の動作。早口で唱え終えるとヨグは両腕をキリークに巻き付けた。

ぴしぃっばりばり・・・・・

ラゾンデがゼロ距離でキリークに炸裂した。逆流した電撃はヨグをも巻き込み、そして。

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