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ジャンのあいさつはいつもヨグをおどろかす。

耳。そう、ニューマンフォース特有の横に張り出した耳を後からくわえるのだ。シティのど真ん中でもおかまいなし。

ぱふっ。

「…ジャンだよね？はぁい。」

「うふふ、いいね。
このまえはいきなりハンドガンをぬいたものね。」

ジャン。ジャンカルロ・モンタギュー博士。
あたしたちハンターズが常に携行している特殊な装置。肩のあたりに浮遊していて成長するマスコットみたいな不思議な機械、「マグ」の開発者だ。偶然、彼の依頼を請け負って個人的に知り合いになった。

あ、彼も長い耳を持つニューマンだ。10代でマグを開発してるそうだけど、早熟はあたしたちの特徴でもある。もっとも寿命も一定してないんだけどね。

「…」

「どうして？って言いたげだね。理由が欲しいかい。そこに耳があるからだよ。ちょうどぼくの口元にきみの耳がある。」

「だれかれかまわずそんなことしてたらいっくら偉くてかしこい天才モンタギュー博士だって変なうわさがたつよ？」

「いやいや、不思議だけどね、きみの耳だけなんだ。くわえてみたいのはね。単純にいってこれは恋愛感情とも無関係だよ。安心した？」

「ふう、なんかさっきまであたし悩みがあったような気がするんだけど、忘れちゃった。」

「うふふ、そう。 ねぇヨグ、命を落としたりしないでおくれ。ホントにぼ〜っとしてたよ。君が死んだらエルノアが悲しむし、君の耳がこの世から消えたらボクが淋しい。」

「ん〜、なんかふくざつ。 じゃあね、ジャン。」

ウインクで応えて雑踏にきえていくジャンを見送るヨグにまた、心配事が頭をもたげてきた。

「黒い猟犬」
先日の依頼任務の後、久々に会ったキリークは「上からの命令でおまえを消す。」と言ってきた。ヨグは状況にあせったが事実には別段驚きもしなかった。請け負った依頼の中には確かにきなくさいものもあったし、何度もラグオルに降りてるうちにイヤというほどウソや陰謀を目のあたりにしていたからだ。

それに。
正面から「消す」と云われたのが何だか認められたようで嬉しくもあった。これは正しいゲームの始まりだ。確実に任務を遂行するなら後からバッサリ、それでいい。あえてキリークはゲームの始まりをつげたのだから。
いや、気掛かりというのは別にある。それはどうもキリークの目的がふたつあるような気がするのだ。告げられたコトバ、「消す」と「美味い魂を喰らう」 。なんか一致しない。

公と私？

「ま、いっか。」ヨグの突然のひとりごとに、転送機械を守る若い兵士が目を白黒させた。

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